とある平日の休み、何をしようかと思っているところに、「バレーボールを見に行ったら?」という声があった。聞くところによると、都内で大学バレーの頂点を決める大会が行われているらしい。僕は、バレーボールの試合経験はないし、これまで時々テレビ中継を観たり、たまに誰かに同行して観に行く程度だったのだが、もともとこうしたスポーツ観戦は嫌いではない。しかも、大学生たちが切磋琢磨して頂点を目指している舞台というではないか。早速、行ってみることとした。
会場に入る。平日だというのに、観客の多いこと。あえて敬称を略させていただくが、テレビで観た清水や福澤といった選手が、自らの大学の主将として出てくるらしい。だが、それだけでいいのか。有名選手だけでいいのか。もっと他に、面白いのがあるのではないか。そんな不思議な気持ちになりながらも、試合開始を待つ。
選手たちがウォーミングアップをはじめる。一つの体育館で4つのコートが仕切られ、同時進行で試合は動くらしい。しかも、体育館の入口にあったトーナメント表によると、今日は男女ともにベスト8の試合が行われる。他のスポーツを出して恐縮だが、高校野球にしても、実はベスト8が一番面白いと思っている僕のこと、自然と期待は高まる。
試合が始まった。目の前では男子の二試合、向こう側では女子の二試合が行われている。自然と選手の一挙一動を注目するようになってくる。直前のコートで繰り広げられる、中央大学と中京大学の決戦、紺色のユニフォームの中央大学、背番号1番の選手が福澤、たしかに卓越したプレイだと、素人目にもよくわかる。
しかし……と、思わず天の邪鬼な目で見てしまう僕。このまま福澤の独り相撲にしていいのか。福澤は確かに凄い選手だし、凄くなるために想像もできないほどの努力と練習を重ねてきているのだろう。でも、他の選手たちも、少なくともそれと同等か、それ以上の努力と練習を重ねてきているはずだ。そうした選手たちの光るプレイを、しっかりと僕の瞼に焼き付けよう。

試合が進むにつれて、福澤以外で目につく選手というのが、自然と出てくるようになる。「あ、あの○○番の選手、俊敏だぞ」とか、「○○番の選手は小柄なのに、それを全く感じさせない大きなプレイをして、チームを盛り立てているぞ」とか。
こう思うようになって、はっと気がついた。誰でも最初は、名前とか細かいところなど、わかるわけがないじゃないか。ただ漠然と、「○○番の選手がいいな」としか思えていない。しかし、それでいいじゃないか。そのスポーツの醍醐味に触れたり、そのスポーツが好きになって、どんどん観戦するようになったり、そのスタートラインとしては、それだけで十分すぎるじゃないか。今、目の前で、準決勝進出を目指している選手たちは、ただ準決勝進出だけじゃない、それ以上のものを観客に伝えられているんじゃないか。そう思えるようになるにつれて、さらに観戦が面白くなってきた。選手の一挙一動を、さらに注目するようになった。それも特定の選手だけではない、すべての選手に、である。ひとときも目を離せないような、そんな状況になってきた。
実際、試合展開も混迷してきた。最初の2セットこそ、中央大学が一方的なペースでものにしていたが、第3セットからは、対する中京大学が本来の力を発揮しはじめた。バレーボールの試合を観ていていつも思うのだが、勝負のアヤというか、駆け引きというか、流れを引き寄せるというか。ほんの些細なことが重要なポイントになって、結局は勝負を決するようなことになるようなことが多い。ほんと、目を離せない。一瞬も気を抜けない。プレイする側はもちろん、観戦する側も同じこと。

第3セットを中京大学が取り、さらに面白い展開となった。第4セット。結果から言うと、中央大学が取って、この試合の勝ち名乗りを上げた。しかし、それに至るまでの試合の流れ、ペースは、完全に中京大学のものだった。試合に勝つことと勝負に勝つこととの違い、微妙な距離感、何とも言い表せない思い。最終的に決着がつくまでの、熾烈なプレッシャー合戦、心理戦の様相を呈した試合展開。そして、目まぐるしく動く展開。他のスポーツではなかなかお目にかかれない、バレーボールの大きな魅力の一つなのだろう。
幾分かのインターバルのあと、次の試合が行われる。最初の試合は定位置から移動せずに、一つの試合だけに注目したので、次の試合では、席を移動しつつ、女子も含めて、いろいろな試合を堪能しよう。そして、最近はじめた一眼レフによる写真撮影にも挑戦してみよう。
写真撮影の練習にもいそしんではみるものの、やはり試合が気になる。男子の後半の試合にも、自然と注目するようになる。昨年優勝の日本体育大学と、昨年4位の立命館大学。大学バレーはどうしても関東が強いというイメージがあるようだが、その風潮に昨年、風穴を開けた京都の立命館大学。この舞台で昨年の優勝校とぶつかることになった。これは面白いことになりそうだぞ。

コートの上部から観戦できる場所で、わずかな隙間を見つけ、写真を撮りつつ、試合を観る。日本体育大学は、たしかに強い。強すぎる。立命館は、それに必死に食らいついていこうとしているように見える。しかし、立命館の選手のほうが、素人目には活き活きとしているように見える。この不思議な感覚は何なのだろう。思わずカメラのレンズは、立命館の選手ばかりをとらえるようになってしまっている。

最初の2セットは日本体育大学の一方的な試合展開である。しかし、立命館の選手から、妙なプレッシャーとか悲壮感とか、全然感じない。むしろ、虎視眈々と流れを引き寄せるタイミングを狙っているように見える。あえて相手の隙を誘い、それを狙っているように見える。そのねらいが見えたのが、第3セットだった。
結果からいうと、日本体育大学ではあった。しかし、日本体育大学以上の活躍を立命館の選手たちは見せたのだと、そう思う。ここも微妙な勝負のアヤ、試合と勝負との勝者の違い。存分に見せつけられたような気がする。
一方、清水を擁する東海大学も、この前(V-M-S注:2008春リーグ)まで関東二部だったらしい明治大学にセットを取られる展開。ここも一息つかせない試合展開である。
こうしていろいろと試合を観て、バレーボールの、テレビなどからは伝わってこない魅力のようなものを感じ取ることができていたのならば、幸せなのだろうな、と思う。そして、いろいろな意味で、単純に面白かった。スター選手だけでない、すべての選手はもちろん、すべての裏方さんも含めた全員で作り上げる、全員バレーがここにあった。この醍醐味を味わえただけで、十分じゃないか。単なるベスト8では観られないものが観られた、本当に充実したひとときであった。
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今回は、文章・写真両方の寄稿をいただきました。ありがとうございます。(→寄稿者のブログ)

